本研究の主な目的は、抽象絵画を描くための段階的なトレーニングおよび作品理解のための効果的な鑑賞方法の検討である。この3年間の考察の中で、表現および鑑賞を一体化させて指導することの重要性がより明確化した。したがって、研究3年目(最終年)の本年は、以下3種のアプローチを融合させた指導方法の検討を中心に資料整理を行い、WEBを通じたデータ公開作業を行った。 1.材料・技法的アプローチ(絵の具・用具などの制作面)として、水性系諸材料を使用したドローイング的表現の追加収集を行った。昨年までに収集したサンプルに不足していた領域に新たに約50件のサンプルを追加した。これらのサンプルをスキャニングし、制作者によるコメントをつけ、約400件のデジタルデータに取りまとめた。その後、材料・用具・行為の傾向別に分類し、データベースにまとめる作業を行った。 2.理論的アプローチ(史的展開の理解)として、表現指導のための「鑑賞+演習プログラム」を作成し、講義・演習の時間を通じて試行した。これらに使用したデータは、下記のとおりまとめた。 (1)テキスト(A5サイズ約30頁) (2)講義記録VTR(公開可能なe-ラーニング用ファイル、各70分、8回)としてまとめた。 3.視覚心理的アプローチとして、心理的理解に関する指導内容を検討し、実際の演習において施行した。 これら3種のアプローチを一体化させた指導を行うことで、抽象絵画の本質的な理解に接近することが可能になるものと考える。 上記1~3を、次のように取りまとめ、ホームページを通じて公開した。 ・「材料・技法的アプローチによる表現分類(作例サンプル)」・「理論的アプローチ(史的展開の理解)」 ・「視覚心理的アプローチ(視覚的力動性の検証)」
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