本研究は、社会科ワークショップ型授業について、学習者の「ふり返り」の表現に注目しつつ、「活動中心の授業」の評価のあり方を明らかにすることを目的とする。ワークショップ型授業は着実に事例開発を進めてきた。その一方、この授業が、活動方法に特化し、教育内容との接続が不十分であるとの批判も学会で受けている。平成22年度は、こうした批判に応答しつつ、ワークショップの活動空間をより精緻に構成する研究に取り組んだ。その成果は、次の3点である。 第1に、批判をうけた小4ゴミ減量ランキングの授業を対象に、「問題解決性」とD.Waltonの「対話理論」に依拠して、教材を修正・再開発した。この実験授業は全国社会科教育学会で発表し、本研究の着実な発展について評価を得られた。 第2に、英語圏のライティング・ワークショップを社会科授業に導入することを検討した。アメリカでは、すでに教室での取組が進んでいるが、日本の実践事例では、学習者の文体がフィクション性の強いものに傾斜する特徴が見られた。社会科学習における学習者の文体論を再構築する課題が明らかになった。 第3に、奈良女子大附属小の「めあてーおたずねーふり返り」のシステムを導入期の1年生の学級で検討した。質問するという行為が、対話の活動空間におけるコミットメントを生み出す機能を明らかにした。 以上の成果は、東日本大震災の影響から、平成23年度前半にまとめを行い、最終報告書(平成24年3月発行)に収めている。
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