本研究は、社会科ワークショップ型授業について、学習者の「ふり返り」の表現に注目しつつ、「活動中心の授業」の評価のあり方を明らかにすることを目的としている。「活動中心の授業」の評価を考えることは、ワークショップ的な自由度の高い試行錯誤を含む活動を、授業の目標・内容との関わりでいかに安定した学習を生み出すものにするかという課題と結びついている。 平成23年度(研究の最終年度)の研究成果は、次の3点である。 第1に、ワークショップの活動空間のタイプを、学習者の思考に結びつける理論として、D.Waltonの「対話理論」を本格的に導入した。Waltonは、対話に6つのタイプを見出している。説得、熟考、探究、交渉、情報探索、争論(個人的対立)である。たとえば、ランキングという活動でも、そのテーマや対話のゴールによって、熟考タイプと探究タイプがあることを、小5稲作農家の活性化ランキングを開発し、明らかにした。これは、活動要素(ランキング、部屋の四隅等)にもとづいていた従来のワークショップ型授業を、子どもの思考構造から整理し、「評価」を行う道筋を明らかにしたものと言える。 第2に、活動空間の学習者の言語活動を充実させる手立てとして、トゥールミンの論証モデルを再検討した。このモデルが、意見の相互作用の局面には十分に及ばない点を示し、相互作用の局面では、「主張・根拠・理由づけ」の3点セットを、協同的に用いることが、学習に有用であることを明らかにした。 第3に、ワークショップの活動空間を安定させるために、協同学習の手法を導入した授業を開発した。対話型ギャラリートークで戦争学習(小6)やヒーローインタビュー中世編(中学歴史)である。 以上の成果は、平成22-23年度研究成果報告書(平成24年3月発行)としてまとめている。
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