研究課題
本研究の目的は、我が国の理科授業における推論に関する教師の価値観および帰納的推論を中心に構成されている理科授業の現状から、演繹的な推論を用いた理科授業が子どもの科学的な概念形成に与える影響を明らかにし、演繹的推論に基づく習得型授業としての教授ストラテジーを示すことにある。このために、平成21年度は、我が国の推論に対する教師の価値観調査および我が国の推論に対する教科書調査を実施し基礎的なデータを収集した。平成22年度は、演繹的推論による教授ストラテジーによる検証授業を構想・実施し成果を得た。授業で子どもの科学的な概念の形成や情意的な側面について、前者においては「実験の方法を探究させる授業」としての有効性を抽出でき、後者においては、学力中位群や下位群のコミットメントの上昇という側面から有効性を抽出できた。さらに、平成22年度は、演繹的な推論を行う上で学習指導要領の基準を超える発展的な学習内容と関連させた演繹的推論による授業方略を用いることで科学的な概念構築につながることを明らかにした。これらの成果は、2本の査読付き論文(科学教育研究)(臨床教科教育学会誌)に発表した。これらの成果を総括するため、研究3年目(最終年)に向け平成22年度から継続してさらなる小学校理科授業を検証中である。さらに、平成22年度に印刷製本され平成23年度から使用が見込まれている新しい教科書の調査も実施し、観察・実験がどのような推論を辿ることを前提に位置づけられているのか調査を開始した。本研究の目的は、教授ストラテジーの構築を試みることにある。そこで、今後は、より多くの授業を構想し実践的なデータを収集し、子どもの科学的な概念の形成に与える影響について調査・研究を深化させることが目的である。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
科学教育研究
巻: Vol.35, No.1 ページ: 47-53
臨床教科教育学会誌
巻: 第10巻第1号 ページ: 1-8