多文化社会では異質な価値観の衝突が生じる。一方の価値観からみるともう一方の価値観は「トレラント(tolerant) ― 寛容」では ない存在,つまり「イントレランス(intolerance) ― 不寛容」ということになる。この「イントレランス」に対して,子どもたちがどのような認識をし,どのような意識や態度を身につけるべきか,そのための社会科教育はどうあるべきかについて考究する。アメリ カの多文化教育における「エクイティ教授論(Equity Pedagogy)」を手がかりに,日米の具体的な社会科実践の観察・分析を通じてそ れを明らかにすることが本研究の中心課題である。 1.授業観察・学校観察:アメリカ・ハワイ州の小学校において前年度に引き続き観察・記録を継続した。 2.「コンプリヘンシブ」に関する資料の収集:ハワイ州教育局の社会科専門官に州社会科カリキュラム改革について聞き取りをするとともに,教育政策における「エクイティ」とそれを補完する概念である「コンプリヘンシブ」に関する資料収集を行った。 3.観察記録の分析:授業の質的研究を方法論としていることから,観察記録の充実を行うとともに仮説生成に取り組み,行政資料等との対比の中から仮説の精緻化に努めた。4.最終年度の今年度は,国内の関係学会のみならず,全米多文化教育学会年次総会(カリフォルニア州オークランド)に参加し,エキスパートレビューを受けた。
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