研究概要 |
平成21年度においては,研究・実践体制を確立し,「アートラボ・ツール」創案に向けた基礎的理論枠組みを検討した。その上で,第1次「アートラボ・ツール」の創案・製作と調査実践を行い,その改善と拡充を図った。 1.基礎的理論枠組みの検討 ビクトル・ダミコの「美術教育装置」および「アート・キャラバン」における教育理念と高橋陽一の「反教化的教化」としてのワークショップ理論を相対化し,また原研哉,深澤直人らによるデザイン理論と実践を参照し,「アートラボ・ツール」創案の基本原理および要件を以下のように策定した。 I・基本原理 A・装置性…装置として高い堅牢性を有する B・目的性…子どもの「五感」を刺激し「能動性」を発揮させる C・造形性…造形として高いクオリティを有する II・要件 A・装置性…(1)堅牢性,(2)イージーメンテナンス,(3)ハンディ,(4)セーフティ,(5)復旧可能性 B・目的性…(1)対象,(2)五感刺激,(3)能動性,(4)手ごたえ,(5)コミュニケーション C・造形性…(1)形態美,(2)色彩美,(3)素材感,(4)丁寧な工作 2. 調査実践 NPO法人CANVAS,慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)が主催する,子ども向けワークショップのイベント『ワークショップコレクション2009』にてワークショップを実践した。期間は,平成22年2月27日・28日の2日間で,イベント全体の参加者は延べ3万5千人,私たちのワークショップには,人数制限を設けたうえで約800人もの参加があった。会場には9台の「アートラボ・ツール」を設置し,ファシリテーターとして13名の学生メンバーが参画した。この実践を通して明らかになった改善要求をふまえて,次年度はさらに様々な場での実践を展開していく見通しである。
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