第1年次として、まず本学大学院でこれまで中学校関数導入時の生徒の学習過程に関わり・行われてきた研究を本研究の観点から再検討したところ、関数の背後にある事象を意識しながら学習しようとするかが、2量の共変性の理解にとっても重要であるとの共通性があり、いわゆる活用が事後的な活動ではなく、導入時からの学習と相互作用的に構築されるべきことが示唆された。一方で、小学校での数量関係領域の授業における抽出児童5名の学習過程のビデオデータを質的に分析したところ、単純な場面では数量関係を適切に把握し、活用できる児童であっても、場面が複雑化した場合には数値合わせ的な思考をしたり、算数的に見て不合理な計算処理を行う傾向があり、単に活用できる/できないの問題というよりも、活用の自己コントロールの問題であること、また二重数直線などの適切な表象によりこの自己コントロールを促進できることが見出された。さらに小学校の関数領域の授業について授業全体と抽出児童4名の学習を記録した。授業では、全国調査などで正答率が悪いとされる大きな数についての外挿に関わる問いかけを意図的に行ってもらった。これにより、中学年の児童であっても数量間の関係をことばの式により表現することで、大きな数についての外挿にも困難を感ぜずに活用が促される様子が観察された。しかし一方で、表などにまとめることで、数値パターンに注意を向け、そのパターンのみに着目して数量関係について考えてしまい、背後にある事象と数量関係との間の関連づけについての意識が低下する様子も見受けられ、上述の知見と併せることで、この関連づけが活用の意識と関連することが考えられた。
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