第1年次において数量関係の生じている現象自体を理解するという意図が伴わない場合に数量間の共変性(covariation)の認識が妨げられる可能性のあることが見出されたことを受けて、第2年次ではそうした現象の理解を意図的に含む学習活動を構成し、それを利用して実際の小学4年生に対して60分×7回の授業を実施した。授業では、自分の見出したきまりと場面で起こっている現象との関連に注意を向けるようにした。さらにそうした関連に注意が向きやすくなることを意図して、第1年次の考察をもとに、事象を意識しやすいよう電子黒板を利用した動的な提示を取り入れたり、事象や問題場面に子どもたちが働きかけることで数量関係が生ずるメカニズムを理解していくという要因にも配慮しながら構成を行った。その上で、授業全体の様子をビデオカメラで記録するとともに、その授業に参加した4名の児童の学習過程もビデオカメラで記録して 両者をデータとして分析を行った。 その結果、子どもたちは現象に働きかけることで、中学年の児童であっても、そこで生ずる多様な共変性の関数関係の双方、またそれらと場面の変化との関連性に着目できるものの、新しいきまりを見出すことに注意が向きがちで、現象の特性を捉えるようなきまりに着目したり、9見た目の異なるいくつかのきまりの関連性に注意を向けたりすることが生じにくいことが見出された。またそのために、多様な関係性が1つの数量的現象の現れであるとの意識が薄いこと、またそのために関数概念に接続しにくいことが明らかとなってきた。見た目の異なる多様なきまりに注意を向けることから、関数概念の素地となる経験に移行するための活動や手立てを開発する必要性が課題として示された。
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