第2年次で浮き彫りにされた問題をさらに追求し、また中学校での接続を考えるために、第3年次においては、「関数」という数学的対象について理解を促す手立てを組み込んだ学習活動をデザインし、子どもの学習過程の記録・分析を行った。 数学的対象としての関数の理解については、従来の研究で関数の構造的把握を促すとされてきた、グラフの全体的特徴に注意を向ける活動を利用した。そうした活動を取り入れた小学校4年生と中学校1年生の授業を記録し、分析を行った。第1~2年次の知見をもとに場面との関連に配慮した課題提示をしたところ、4年生、中学校1年生のいずれにおいても、グラフの全体的な特徴に注意を向けた思考が無理なくでき、また共変的な捉え方と関数的な捉え方の双方についても自然に行われることが確認された。他方で、これらの思考が場面を離れて行われ、いわば関数的な理解がmodel-ofからmodel-forに移行する部分が自然には十分に展開されにくいが、その萌芽は小学校でも見られることも確認された。つまり、従来のような手続き的把握から構造的把握への直線的な移行というよりも、それら全てが素朴レベルで生じている状態から、より意図的な把握に移行するというモデルがカリキュラムの構成原理として必要であることが示された。
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