本年度は、研究目的に従い以下の研究を実施した。 まず、教師教育全般に関する教師に焦点化した研究では、まず反省的実践家モデルの教師像について批判的な分析を行った。その結果、ショーンによって提唱された反省的実践家の理念は評価されながらも、教職は他の専門職とは文脈や状況が異なること、近年イギリスでは良き教師という考え方が見いだされていること、反省的実践家が自己の専門職としての成長を基盤としているに対し、良き教師は授業の文脈における自己と学習者との関わりに基盤をおいていること、などが明らかとなった。加えて、教師知識に関しては、特に授業を想定した教材化の知識について分析した。その結果、この知識は多様な解釈がされていること、階層性があること、教職経験と関連があること、などが明らかとなった。また、戦後の教育職員免許法施行規則における家庭科に関する科目の変遷について分析した。 次に、家庭科教師の生涯にわたる教師としての専門的成長に関する研究では、県内の小学校及び中学校の家庭科授業の実践について収集した資料を分析した。その結果、研究課題は多様な領域から構成されているが、全国的な教育や社会の動向(例えば、食育や家族)、子どもの実態などに応じた設定されていたことが明らかとなった。また、新しい学習指導要領にあわせた食育と環境教育に関係する教材開発をし、現職教育の一環として授業研究を行い、教師教育の視座から分析した。その結果、大学における講義・演習内容について、融合的・学際的な内容を授業の文脈にあわせて取り入れる必要性が明らかとなった。
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