本年度は、諸外国で求められる教師像について、文献研究を中心に欧米諸国の教師像について分析を行った。その結果、フィンランドでは教員養成教育では研究者としての教師像が求められ、そのための大学では教職についても研究ができる多様な講義・演習がシステム化されている。それに対して、現職教育は日本と比べると地方自治体等によるシステム化が行われていないこと、などが明らかとなった。また、イギリスでは1990年代盛んに教員養成教育で提唱されていた反省的実践家の教師像が変容してきたこと、1970年代に提議された生涯にわたる教師としての専門的成長の視座から教員養成教育と現職教育についての国家的な基準が設定されていること、などが明らかとなった。 わが国の教師教育について、探究の技法、専門職コミュニティー、専門職の文化の視点から授業研究を歴史的に分析した。その結果、授業研究は伝統的にわが国の教職文化として教師たちの協働に基づく技法であること、などが明らかとなった。 臨床的・実証的研究として、これまでに収集した中学校家庭科教師(初任者と熟練者)の教材化に関する知識の分析を行った。その結果、初任者と熟練者では、知識領域によりその量に違いがあること、などが明らかとなった。また、諸外国の動向を参考にしながら、新しい学習指導要領及び政府の食育の方針を考慮して、環境と食に対する子どもの変容を調査する授業を中学校家庭科教師とともに計画・実践した。その結果、教師にとっては新しい教材開発の視点が得られたこと、生徒にとっては自己の生活を振り返りエコの視点で調理をすることの認識が生まれたこと、などが明らかとなった。
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