本研究の目的は大きく次の2つである。(1)複数の文化的背景を持つ、日本在住のニューカマーの子どもの音楽的アイデンティティ形成過程の実態と課題を実証的に明らかにする。(2)南米諸国の子どもの遊び歌等の収集を行い、(1)の調査結果も踏まえて、外国人児童生徒の在籍する小中学校における音楽科教育および国際理解教育において実践可能な音楽教材および指導方法を試行的に開発する。研究初年度である本年度は、(1)については、2008年9月の金融ショック後の雇用情勢悪化による滋賀県在住外国人の生活状況の変化についての研究協力者(滋賀県国際協会嘱託外国人生活相談担当者)からの情報提供を活かしながら、調査実施計画を立案し、2年目の調査実施に向けての検討を行った。(2)に関しては、ISME発行の"Songs of Latin America : from the Field to the Classroom"等、収集した歌の本から曲目を選び、それを教材として学校教員対象のワークショップおよび大学生を対象とした試行的活動を実施し、学校教育への導入可能性を探った。また、保護者の協力により、ニューカマー児童が視聴しているテレビ番組のビデオや歌の収集に着手した。研究2年目は、初年度からの調査研究(刊行されている南米諸国の子どもの遊び歌集の収集、外国人児童生徒への調査)を継続実施するとともに、外国人集住地域や学校での遊び歌の収集・整理を重点的に進める計画である。
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