研究概要 |
昨年度は,地理学の研究成果をもとにスケールの概念について,地図学的スケール,方法論的スケール,地理的スケールの三種に分類されるという知見と獲得した。今年度はそれらをもとに教科書が採用している地域スケールと問いの質との関係について分析作業を行うこととした。 そこで今年度は「地理的スケールの概念を用いて,異なったスケール間の関係性やスケール自体を重層的に,つまりマルチ・スケールで取り扱うことができるのか」および「マルチ・スケールのアプローチを用いた地誌学習の具体的な例を,身近な地域のスケールで開発することは可能か」に答えることを中核的なリサーチクエスチョンとして研究を行った。 その結果,地理的スケールの概念を用い,かつフードシステムの地理学的研究を援用することによって,異なったスケール関係を捉えることができる中学校社会科地理的分野「身近な地域」の単元開発を行うことができた。そして,その概要を人文地理学会特別例会で口頭発表した。また口頭発表した成果を核として,日本地理教育学会に論文を投稿し,掲載が決定された(2011年4月掲載)。さらに,2010年11月には,地域のスケールに応じた地誌学習について全国地理教育学会研究大会のシンポジウムにおいて口頭発表し,その内容を中核として古今書院発行の雑誌「地理」56-3号(2011年3月発行)によって報告した。 また,並行して,日本地誌学習の地方レベルの地域スケールについて,どのような質の知識を組み込もうとしているのかについて,分析を行ってきた。比較対象として,イギリスの中等地理教科書の知識を抽出する作業を行った。
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