検定初年度(昭和23年度)の検定(昭和24年度使用)は、今日に至る検定国語教科書の編纂に大きな影響を及ぼしている。まず文部省で検定され、その認可されたものが英訳されて、さらにCIEで検定(検閲)されている。二重字に検定(検閲)されていたのである。そのCIEに提出され検閲された英訳原稿が、NARA(米国立公文書館)に所蔵されている。4年間の研究のうち2年目の本年度は、中学校の国語教科書について、NARAへの現地調査、また補充調査として教科書研究センターを訪問調査した。その結果、次のことが明らかになった。 ○1年生から3年生までそろって合格した国語教科書はなく、『私たちの国語』(1上・1下、文壽堂)、『国語』(第1学年用1・2・3、教育図書)の2種のみ、ともに1年生用という惨憺たる結果であった。 ○不合格につながるCIEでの具体的な検閲意見例としては、次のようなものが見られた。 ・やせがえる負ける一茶これにあり→「勝負事」ということか?・女のジェラシー→男も同じ・女性が男性よりも地位が低い→削除・hell(地獄)、revenge(復讐)、god(神)、emperor(天皇)→単語(ことば狩りに近いか)を削除など、内容面・語彙面への検定が行われた。 ○その一方、英語の綴り(spelling)の間違い、英訳(translation)の稚拙さ、写真と本文との不整合(タオルが文章中にはあるのにイラストにはない)など、いわゆる単純な校正ミスの類も多く指摘されている。 ○教科書研究センター所蔵の原田親貞文書(検定意見)との関連が濃いことが次第に明らかになってきた。原田文書ではCIEに提出した原稿が「認可・条件付き許可、不認可」の3種類で受付番号だけが記されており、この関連の究明が今後の課題である。
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