研究概要 |
本年度の研究は2つに分かれる。その1は,「ことばによる応答理論」の学習と幼児向きのぬりえ絵本の製作を通して,中学校家庭科の「ふれあい体験学習」を開発することである。その2は,国際理解教育の視点から,「ことばによる応答理論」の学習とぬりえ絵本製作をとおしてモン族の子どもたちと心を結びあうことを可能とする,高等学校「家庭基礎」の保育学習をつくることである。 前者については前年度の研究と同様の成果が得られているので,ここでは後者について報告する。平成22年度,広島と福山の両附属高等学校の生徒を対象として,次の(1)~(4)のような家庭科の授業を実施して,学習効果を測った。(1)「針と糸の民」といわれるモン族の生活について,映像の視聴や刺繍が特徴である民族衣裳の実物に触れることを通して理解させるとともに,モン族の子ども文化の形成を支援することの重要性や,このような支援のためには,絵本が重要な役割を担っていることを了解させた。さらに「ことばによる応答理論」の学習をさせた。(2)2つの附属学校の高校1年生の各2クラスにおいて,モン族の子どもに読み聞かせをすることを前提にした「ぬりえ絵本」を製作させた。(3)出来上がった絵本をモン族の支援団体であるシャンティ山口に委託し,タイのホイプム村において保育園児を対象として読み聞かせを実施してもらい,その際の反応を写真や映像等を通して知らせてもらった。(4)授業の事前と事後において実施されたアンケート調査等を集計・分析した。 以上の(1)~(4)を実施したことにより,「ことばによる応答理論」の学習と「モンの子どもたちに贈るぬりえ絵本の製作」を柱とした家庭科授業は,国際理解教育の視点を含んだ,新しい形の「ふれあい体験学習」となり得ることが明らかになった。
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