算数・数学教育において読解力を育成する研究は、わが国おいてまだ緒についたばかりではあるが、先行するいくつかの研究は存在している。一昨年度は、本研究の実施の端緒として、これら先行研究について、読解力の意味を定めること、算数・数学教育で読解力を育成する方法を持つことの2点を中心に、分析を行った。昨年度は算数・数学教育における読解力の育成について、論理的思考の育成の観点から、算数・数学教育における読解力の育成で重視すべき事柄を明らかにし、それを踏まえた授業実践の在り方を提言した。 本年度は、3年間の研究の最終年度の研究として、小学校算数教育、中学校数学教育における読解力の育成に向けての年間指導計画を作成した。各学年を3期構成とし、一つの教科書の指導内容をモデルとして、その代表的な内容に関わりながら読解力の育成に向けての指導の実際を提案した。例えば、小学校4年生の「式のよみかた」では、碁石の並べ方を各児童がいろいろ式で表し、他の生徒が式から碁石の並べ方を読み取る活動をさせ、式がもつものごとの表現力を理解させ、また、そのような表現を読み取る力をつけるような指導を提案した。また、中学校2年生の「証明」では、証明の仮定を図で表わす活動を設けたりしながら、単なる文章表現ではなく、図の助けを借りながら証明の読解力をつける指導を提案した。
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