研究概要 |
今年度は,昨年度に引き続きカテゴリー学習論の主要論者の検討を行った。比較的若い世代の代表的論者である,P.マッシングを取り上げ,生徒志向学習論の系譜に属する考えられる「行為志向」原理をどのように受け止め,カテゴリー学習論を展開しているかを明らかにした。マッシングによると,「行為志向」原理は,著しく低下している学習者の政治的なものへの関心を再び高めるという,政治授業における動機づけ問題を解決するために一定の効果のあるものである。しかし,行為志向的政治授業が「個々バラバラの活動主義」や「面白授業」,「活動療法」以上のものであるべきであるなら,カテゴリーによる洞察ならびに思考による抽象を必要とする。そのカテゴリーとは,問題-対決-評価・反応という政治サイクルに関するカテゴリーと,このサイクルに影響を及ぼす憲法,法律,制度,経験,価値・イデオロギー,活動者・関係者,利害,権力関係,状況,解決策,費用と利益というカテゴリーである。政治状況を判断するためのカテゴリーとは効率性(有効性,コストパフォーマンスなど)と正当性(自由,公平など)である。マッシングは,政治上の様々な立場を前提とする多元主義を受け入れつつ,様々な立場によって許容可能なより包括的分析・判断カテゴリーを見いだすこと,学習者個々人による判断を根拠づけるためのカテゴリーを整備することによって,これまでのカテゴリー学習論を発展させようとしている。
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