本年度は、これまでの研究調査を基盤として、イッテンの「日記帳」や「書簡」など、活字化されていない手書きの未公開資料などの解読を進めた。手書き資料などの判読には時間がかかるが、イッテンの教育理念とかかわる東西思想への探究等に関わる記述を中心に分析を進めた。また、イッテンの指導を受けた教え子たちの関係資料及び関係者への研究調査を更に進め、イッテンの美術教育実践における具体的な内容と彼の教育理念とのかかわりについて検討した。昨年度新たに所蔵先が判明した新資料については、所蔵者の許諾を得て調査研究を行なうことができた。研究調査と併行して、最新の関連研究書を入手するとともに、イッテンが活躍していた当時の資料や書籍の複写を現地の研究機関や図書館等において行なった。欧州では、イッテンが教鞭を執ったバウハウスが2009年に創立90周年を迎えたことを機に、バウハウスに関する研究書やバウハウスと繋がりのある人物等の関連研究書が相次いで出版された。ドイツで出版された研究書(《Esoterik am Bauhaus》Schnell&Steiner出版社、《Boris Kleint》Kruger出版社)に掲載された筆者の研究内容やバウハウスに関する最新の研究動向について、現地の研究者と意見交換を行なった。 高知大学において「平成21年度高知大学研究功績者賞」(2010年)を受賞し、これに伴い、第21回アカデミアセミナー(2010年7月/高知大学)において講演「ヨハネス・イッテンの芸術教育における人間を中心とする考え方について」を行なった。
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