研究概要 |
昨年度の海外調査の過程で新たに所在が判明した資料の現地調査を行うとともに、ヨハネス・イッテンの東西思想探究にかかわる手書き資料などの解読を進めた。イッテンが老子の思想を重視していたことはよく知られるが、イッテンの手書きの日記帳には、老子以外にも東洋の思想探究に熱心に取り組んでいたことを示す記述があった。また、古代エジプトのヒエログリフ、仏教の聖典に使われるパーリ語などにかかわる記述や、森羅万象・自然・芸術の中にみられる調和についての著述などへの関心が窺えた。イッテンの教育活動には、多方面にわたる彼の探究の一端が活かされていた。 イッテンは芸術教育において、明暗、長短、大小、強弱、静動など様々なコントラストの研究を重要と考えていた。これに関連して、私がかつて実践した教育研究の成果から、教育プロセスに対比的な考え方や対極的な概念を活かすことは、創作や表現の手がかりとなり、教育上の効果が認められることを明らかにした。 2012年11月にスイスのベルン美術館における“Itten-Klee. Kosmos Farbe(イッテン-クレー 色彩宇宙)”展覧会の学術関連行事として開催された学術シンポジウム“Der Entdeckung der Farbe(色彩の発見)”に出席し、ドイツ及びスイスの研究者たちと研究上の意見交換をした。同展覧会に際して出版された図録Hrsg. von Christoph Wagner, Monika Schäfer u.a., Itten-Klee. Kosmos Farbe, Verlag Schnell&Steiner,2012の文献一覧に研究代表者の論文が紹介された。
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