研究概要 |
本研究の目的は,吹奏楽,声楽,ピアノ,フルートの4名の熟練指導者の演奏指導について,特に演奏表現に関する指導に焦点を当て,その特徴を明らかにすることにある。吹奏楽,声楽,ピアノ,フルートの4名の熟練指導者に対して,演奏表現に関する指導に焦点を当て,PAC分析に基づくインタビューを実施するとともに,レッスンまたは合奏指導場面をVTRに録画し,指導内容及び指導方法についてカテゴリー分析を行った。インタビュー内容を分析した結果,フルート指導者と声楽指導者が美しい演奏の基礎として呼吸や発声などの正しい身体の使い方を重視しているのに対し,ピアノ指導者と吹奏楽指導者は演奏者自身の「楽曲の理解」を指導の根幹にあげていた。さらにレッスンまたは合奏指導場面を分析した結果,演奏表現指導において「適切な」あるいは「正しい」知識や技能を習得させることを重視するフルート指導者と声楽指導者は,単純な指示・評価または近似値型隠喩的指導によって人間やそれ以外の事物の運動との関連性によって演奏をコントロールする運動原理や演奏を通して喜びや悲しみなどの特定の感情イメージを聴手に対して与えることを意図する感情表現に焦点を当てた表現指導を行なっているのに対し,生徒自身の理解に基づく主体的な表現を重視するピアノ指導者と吹奏楽指導者は,想像型隠喩的指導により音楽的構造を明示を意図する生成規則に焦点を当てたを多く用いる傾向が見られた。
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