平成22年度は研究実施計画に沿って次の二点に取り組んだ。 (1)21年度に収集しその分析に取り組んだ戦前の社会科前史に相当する未分科教育、直観科、合科学習等の実践のうち、社会科最初の授業(桜田小学校:授業者日下部志げ教諭)に直接影響を及ぼした東京都墨田区横川小学校の未分科教育がどのような考え方に基づき、どのような実践であったかについて、文献調査と当時の児童5名(日下部学級)に対する聞き取り調査を行った。その結果、未分科教育は、明石女子師範附属小の主事であった及川平治の「分団式動的教育法」の「自学学習」・「過程教育」に限定した田島音次郎校長の考えに基づいていることやその授業の実態を把握することができた。このことにより、明石女子師範附属小→横川小学校(未分科教育)→桜田小学校(日本最初の社会科授業)の連続面と社会科の独自面の核心部分を明確にとらえることが可能となった。23年度に、その成果を学会で発表し、また論文化する予定である。 (2)成立期の社会科(昭和22年度学習指導要領社会科編I・小学校社会科補説)の考え方は、米国のヴァージニア州やカリフォルニア州の学習指導要領に影響を受けていることは、すでに明らかになっている。22年度は、前述の各指導要領等を貫いている「社会の捉え方=主要な社会な社会機能」の源流を明らかにするため、1920年代から40年代のNEAの年報や国内外のカリキュラムに関する文献を収集し、分析を試みた。大きな変遷については把握することができた。詳細かつ明確な把握は、研究を継続し23年度中に成し遂げたい。一方、実践面における連続面、すなわちカリフォルニア州の郡コース・オブ・スタディの「unit of work」(ヘファナンの紹介)と「作業単元」の関連については、新たな資料により、三つの郡の事例ではないかという点まで明らかになった。その特定については、23年度中に解明したい。
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