研究概要 |
本年度は,3年間の研究計画の最終年度ということで,昨年度に実施した複式学級を担任する小学校教師へのインタビュー調査,および授業ビデオの分析を通して,複式学級における算数科学習指導デザインに関するアイデアの具体化を図った. 複式学級における算数科学習指導は,そのほとんどが学年別指導と呼ばれる授業形態によって実施されているため,「わたり」のタイミングや,教師がいない間接指導時の学習課題の設定などに大きな課題があった.このような複式学級指導の課題に対する改善のアイデアとして,E.Ch.Wittmann氏の本質的学習環境の理論から,2つの具体的なアイデアを導出することができた. 1つは,操作的証明による理由づけの活動である.複式学級では,間接指導という児童の学習活動場面が設定されるため,自ら学習具を操作してそこから算数的な性質や法則を理解し,児童同士で説明していくという場面が多く設定される.そのような学習場面において,操作的証明と呼ばれる学習活動が有効であることが明らかとなった. もう1つは,間接指導時の課題設定としての生産的練習という練習様式の有効性である.生産的練習では,問題を解き終わったら学習活動が終了するのではなく,解き終わったのちにどのようなパターンを発見できるか,またそれを説明できるか,というところまで学習活動が展開されるため,複式学級においては,「わたり」のタイミングを取りにくい状況において,このような学習活動が有効に作用することが明らかとなった. また,本年度はこれらの研究成果について,イギリスの研究者や教員志望の学生とも意見交換し,複式学級の指導に関する教員養成上の課題についても示唆を得ることができた.
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