本研究は、木材加工教育における学習者のストレス反応をアンケート等による主観的評価と唾液アミラーゼの生理応答を用いた客観的手法で、木材加工の作業前後におけるストレス反応の基礎資料を得る目的で実施した。このことは、ものづくり教育の果たす教育効果としての達成感・成就感をストレス反応として定量化可能かを検証することでもあり、ものづくりに対するパーソナリティの影響、ものづくりへの抵抗感を減らすための教育的工夫ならびにその活動を通じた心身の健全なるマネジメント教育を追究するという重要な意義がある。初年度は、対象を大学生と中学生とした。なお事前に被験者へは、実験協力の趣旨説明とともに個人情報保護ならびに未成年の場合は保護者あてへの説明と了解をえたのち調査した。大学生のべ46名を対象とした調査では、木材加工作業後におけるストレス反応は減少する傾向が認められるものの、苦手意識のある被験者にあっては、逆にストレスの高くなる傾向もみられ、パーソナリティやレディネスの違いが反映されるといえた。さらに作業内容の異なる場合でも、ストレス反応の違いが個別に現れるなどストレス変動を一般化することの難しさも明らかとなり今後の課題とした。次に、離島の中学校1学年のべ300名を対象とした調査では、事前に、木材加工の嗜好・経験の程度を調査し被験者をグルーピング、また安静時における唾液アミラーゼのストレス量を計測しベースラインを特定したのち、木材加工の作業前後におけるストレスを計測した。製作題材は、30分で完成する簡易なCDラックとした。木材加工に対して嗜好性の高いグループは、作業前後のストレス低減効果が有意差5%で認められ明らかにストレスが減少した。その反対に、苦手意識をもつグループでは明らかな差を認めることはできなかった。今後の課題として、同被験者を対象とした追試と製作治具の使用によるストレス低減効果を検討する。
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