本研究は、木材加工教育における学習者のストレス反応の変化を収集し、ものづくり教育を通してストレスマネジメントの効果が得られる教育プログラムの開発をめざしている。本年度は、研究期間2年目に相当し、1年目の被験者と同じ被験者を対象に1年経過後の追跡調査を行った。調査対象は、鹿児島県離島の中学校2年生59名とし、木工作業前後における唾液アミラーゼによるストレス変動を測定した。対象者にはあらかじめ木材加工に対する嗜好・経験・得意に関するアンケートによるレディネス調査を実施し、点数法によりグルーピングした。ストレス測定の方法は、ニプロ製唾液アミラーゼモニターを使用し、被験者にはふたつのチップを同時にくわえ、舌下より唾液を採取し得られた測定値の平均をその時点でのストレス値とした。測定時刻は午前8時、10時30分、14時、16時、17時の一日5回とした。なお、16時~17時の間に木工作業を取り入れた。木工作業の製作題材は、30~50分で製作可能な簡易なCDラックとし、作業工程は、けがき、のこぎりびき、釘打ち付けとした。素材はヒノキ1枚板(長さ1m、幅120mm、厚さ12mm)を使用した。作業の結果、事前のレディネス調査から、木工作業が好きで得意とするグループ20名(男子9名、女子11名、以下「好き・得意群」)と、嫌いで苦手とするグループ20名(男子12名、女子8名、以下「嫌い・苦手群」)の2群に分けたときの木工作業前後のストレス変動をみると、「好き・得意群」は平均で50.7(KU/L)から39.2(KU/L)に低減し、危険率95%で有意な差が認められた。一方、「嫌い・苦手群」では61.9(KU/L)から52.7(KU/L)に下がったものの有意な差は認められなかった。2年続けての追跡調査の結果から、木材加工に対する苦手意識の高い対象者では、ものづくりに対するストレス低減効果が期待できない結果が追認できた。今後は、教育支援の方法、教育プログラムの開発が必要といえた。
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