研究代表者らは文学作品に親しみを持てる授業として、作品内容に関係のある音楽作品の鑑賞を含めた国語教育を行ってきた。その中で取り上げた文学作品を読んでいく上で重要だと考えられる音楽作品を鑑賞することによって、その文学作品を新たな視点から捉えるという、これまでに例がない教育を実施してきた。このような国語教育を通して、文学作品から受ける印象に音楽的な感性がどのような影響を与えているかを、系統的に示すことを目的に本研究は進められている。用いた文学作品は村上春樹の「ノルウェイの森」で音楽はビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」などで、130名の実験協力者のデータを因子分析により解析した。明暗因子の変化をねらった授業で、音楽を聴いた場合と聴かなかった場合の変化の差を数量的に明らかにし、結果を発表した(竹下哲義ほかによる全国高専教育フォーラム教育研究活動発表概要集「国語教育に音楽鑑賞を取り入れる試みとその教育的効果」2011年)。 この研究により、音楽を聴いた場合の方が聴かない場合よりも約2倍の変化量を示し、研究代表者らが意図した教育効果があることが判明した。また、これらの変化はいずれも有意な変化であることを確認した。さらに、他の教育機関においても実験授業を実施して、環境と教育指導者が変わった場合でも同様の効果があることも確認した。 これらの実験により、国語教育に音楽鑑賞を取り入れることで、文学作品を別の視点から捉えることができることを実証することができた。
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