研究概要 |
本研究は,「郷土の音楽素材」による教材開発とその教材を活用した大学教員のアウトリーチ・プログラムを連動させた,地域の音楽文化遺産伝承と時代の要請に応じた教員養成の試みである。本研究における「郷土の音楽素材」とは,(1)伝統音楽的音楽素材(民謡,お囃子,わらべうたなど),(2)西洋音楽的音楽素材(明治以降の秋田県関連の作曲家の音楽作品や著作など),(3)生涯音楽的音楽素材(県内各地域における特色ある文化施設や音楽活動,人材など)の三つである。主な研究内容は,i)「郷土の音楽素材」の教材開発とライブラリの設置運営,ii)開発した「郷土の音楽教材」を活用した大学教員によるアウトリーチ活動,iii)教員養成における「郷土の音楽教材」の導入と実践である。本年度は,3カ年11段階の研究計画のうち第3から第7段階として,ライブラリの収蔵資料及び教材数の増加を図るとともに,ライブラリの資料・教材を活用した大学教員のアウトリーチ活動と3回に渡る市民向けレクチャー・コンサートを実施した。アウトリーチ活動では,秋田県内の小学校2校,中学校1校を対象として,秋田県関連の音楽家の作品を取り入れた鑑賞教室を実施した。また,市民向けレクチャー・コンサートでは,地域の音楽家と協同し,秋田県関連の音楽家の作品によるコンサートを開催するとともに,ライブラリで収集した作品(楽譜),著作,文献,録音資料等の公開を行った。地域出身もしくは関わりの深い音楽家の作品は,音楽作品そのものの受容が促進されるだけでなく,興味関心の高まりが音楽の学習意欲の増大へと結びついていくことが確認された。教員養成の取り組みとしては,学部および大学院の教材として秋田県関連の音楽家の作品を採り上げるとともに,その成果を踏まえて23年度には系統的なカリキュラム開発へと発展させていく計画である。
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