リンカーンセンターインスティテユート(以下LCIと記述)の美的教育カリキュラムを、ワークショップのプランニングというカリキュラム構成過程に焦点を当てて検討することで、美的教育における言語的活動の特徴を検討した。LCIのワークショップでは「探究の道筋(a Line of Inquiry)」と名付けられた一つの「問い」に、中核的な位置づけが与えられている点。「探求の道筋」とは、「オープンエンドでありながら焦点が絞られた一つの質問であり、一つの芸術作品を巡る深いブレーンストーミングの中から現れ、さらなる探究や探求を促すもの」である。 2010年9月7日、東京において、「美的教育」実施のために担当教師と協働でカリキュラムを構成するためのプラニングのセッションを、複数の研究参加者を対象として、前LCIティーチングアーティストであるJ.ジェームズ氏に実施していただいた。その参加観察をとおして、「探求の道筋」と呼ばれる問いがどのように生成されるかに焦点をあてて分析した。 次に、筑波大学附属小学校の西村徳行教諭の図工の授業において、ジェームズ氏と西村氏と筆者等の協働でワークショップのプラニングを行い、ジェームズ氏と西村氏が連携して小学校3年生の子どもたちに研究授業を実施した。 「探究の道筋」とは、決して出来合いの問いではなく、これから授業をする学校の教師との協働によって生まれた問いであり、この問いを持つことによって、教師自身のエキスパート性による導きを否定せず、同時に芸術作品に対して学び手が個性的なアプローチする授業が生成する様相があきらかになった。
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