研究最終年度である本年度は,本研究の最終目的である初等教育段階における確率概念の形成を意図したカリキュラムの原案を考案することを目的として,以下の研究を行った。 1.研究第1年次(平成21年度)の実態調査の被験者(広島県下の公立小学校3校:広島市立長束西小学校,東広島市立高美が丘小学校,竹原市立竹原小学校,の全学年児童)を対象として,同一問題(具体的な問題場面における当たりやすさの比較問題:玉引き(分離量素材)の問題6題,ルーレット(連続量素材)の問題8題)を用いた実態調査(第4年次)を継続・実施し,初等教育段階における児童の年齢の発達に伴う確率判断の実態の変容を縦断的に把握・考察した。 2.諸外国の初等教育段階における確率概念の形成を意図したカリキュラムについて,教科書における具体的な記述内容を調査し,考察した。調査・考察の対象とした国は,アメリカ,カナダ,イギリス,フィンランド,ドイツ,中国,韓国の7カ国である。 3.初等教育段階における確率概念の形成を意図したカリキュラム(「形成したい確率概念の内容と学年別目標系統表」,「学習材の素材と学年別目標系統表」,「具体的な学習材の開発及び学習指導展開」)の原案を作成した。その際,「形成したい確率概念の内容と学年別目標系統表」では,「不確定な事象の存在,確実性の度合い,同等に確からしいという概念」,「ランに関する認識 (負の新近効果)」,「標本空間に関する認識」,「確率の数量化」,「確率判断の観点(比や割合としての見方)」,「不確定事象とのかかわり」を項目とし,学年別の目標を設定した。また,「学習材の素材と学年別目標系統表」では,分離量素材としてのカード,サイコロ,玉引き,さらには連続量素材としてのルーレットを学習材とし,学年別の目標を設定した。
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