22年度は、教育プログラムの作成と試行、西陣織データベース作成にむけた研究を、1.技術、2.織物組織構造、3.機『音』、の3つに分けて実行した。 1. 西陣織の技術を機器→動作という視点で調査研究し、教育プログラムへの展開を計った。機器においては、西陣織の原理原則として取り上げた初期産業革命期から受け継がれてきたシステムを中心にし、[製織]と[紋彫]に焦点を絞った。[製織]は、経糸の開口、巻取りや張力の均一保持の装置、緯糸を通して打ち込みのための機器、道具について、[紋彫]は、ピアノマシンや台彫りについての資料収集、調査、実験を行った。さらにそれらの機器を用いて、動作習得のための2つの短期実習プログラム、『箔糸を引く』『紋をすくう』を作成し、試行した。 2. 西陣の織物組織構造に関しては、教育プログラム作成の視点から、『紋様と組織』と題して、基礎授業と応用プログラム(共に半期)の2つを作成、試行した。また、教材開発の視点から、起機と伏機のしくみと組織構造、織り耳の構造と役割、の2つに関して教材となるサンプル作成も含めた実践的な研究を行った。さらにデータベース構築の視点から、西陣とフランスリヨンの織物組織構造と技術の比較研究を開始した。獲得した西陣織の研究成果をリヨンと比較することで、本研究の教育プログラムには不可欠な西陣織物技術の原理.原則の明確化を図る。 3. 機『音』については、昨年度に引き続き、織物組織の種類との関係を確認するための『音』収集を行った。さらに、[製織練習プログラム]として実験的に導入し、一連の動作のリズムと手順に関する技術習得に効果を確認し、教材への展開の実感を得た。動作(杼をとばす、打ち込む、踏み込むなど)の強弱の習得には、個別の音を分析比較する必要性など、新たな問題点の抽出を行った。
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