戦後のわが国と韓国の道徳教育において、両国は制度的、内容的に非常に近いかたちで行われてきたが、1970年代に教科教育の一つとなった韓国では教科教育学的視点からの整備が進められ、道徳教育の目標、方法、内容に関する本質究明が進められてきた。一方、1958年の特設以降も「道徳の時間」がイデオロギーの対立に巻き込まれ論争化してきたわが国では、学問的あるいは教科教育学的な研究は置き去りにされてきた感が否めず、特設道徳に対する本質究明は大きな課題となっている。よって本研究では、韓国の道徳科成立期における展開実相についてカリキュラムを中心に分析することにより、特設あるいは教科としての道徳教育の原理を究明し、わが国の道徳教育への示唆を見出すことを目的とした。具体的には韓国の1945年~1960年代の道徳教育関連教科のカリキュラムと教科書を対象に、道徳科が教科として成立していく過程を歴史的、理論的に究明しようとするものである。 平成21年度は初年度の調査重点期であり、8月と12月の2回、韓国での調査及び資料の収集に重点を置き、その研究成果について学会で発表した。平成21年8月10日~13日まで第1回目の調査を実施し、ソウル大学のチョン・チャンウ教授、韓国教育課程評価院のファン・インピョ氏に面会して韓国の道徳教育の歴史的経緯について調査した。同時に、ソウル教育大学附属図書館においては関連のカリキュラムと教科書の収集に努めた。平成21年12月10日~15日には第2回目の韓国調査を実施し、公州教育大学の徐在千教授、ソウル大学のチョン・チャンウ氏に面会してインタビューを実施した。 次に学会発表についてだが、平成21年8月29日に日本教育学会で「韓国の道徳教育改革の動向」を発表、平成22年3月13日には東北教育学会において「1960年代の韓国道徳カリキュラム-特設道徳としての「反共・道徳生活」の歴史的意義-」を発表した。 以上。
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