戦後のわが国と韓国の道徳教育において、両国は制度的、内容的に非常に近いかたちで行われてきたが、韓国では1970年代から教科教育学的視点からの整備が進められ、道徳教育の目標、方法、内容に関する本質的な究明が進められてきた。一方、1958年の特設以降も「道徳の時間」がイデオロギーの対立に巻き込まれる中で論争化してきたわが国では、学問的あるいは教科教育学的な研究は置き去りにされてきた感が否めず、特設道徳に対する本質究明は大きな課題となっている。よって本研究では、韓国の道徳科成立期における展開実相についてカリキュラムを中心に分析することにより、特設あるいは教科としての道徳教育の原理を究明し、わが国の道徳教育への示唆を見出すことを目的とした。具体的には、韓国の1945年~1960年代の道徳教育関連教科のカリキュラムおよび教科書を対象に、道徳教育が教科として成立していく過程を歴史的、理論的に究明しようとするものである。 平成22年度は中間年度の時期であり、7月と9月の2回、韓国での調査及び資料の収集に重点を置くとともに、その研究成果について学会で発表した。平成22年7月22日~26日まで第1回目の調査を実施し、ソウル教育大学のイ・インジェ教授、韓国教育課程評価院のファン・インピョ博士に面会し、近年の動向について調査した。また平成22年9月16日~18日には第2回目の韓国調査を実施し、韓国教育課程評価院のファン・インピョ氏にインタビュー調査を実施した。 次に学会発表だが、平成22年8月31日に高校「倫理」と大学教養教育連携のための研究会で「韓国の道徳教育改革の動向-『2007年改訂教育課程』の特徴-」を、平成22年11月6日には韓国近代日本学会において、「米軍政期の『初等公民』教科書の内容と方法-朝鮮語学会との関連から-」を発表した。
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