研究課題/領域番号 |
21530995
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
伊藤 謙一郎 東京工科大学, メディア学部, 准教授 (90386772)
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キーワード | 聴音課題 / ソルフェージュ / フォルマシオン・ミュジカル / 音楽構成要素による分析 |
研究概要 |
平成23年度は、前年度に完了できなかった聴音テキストの音楽構成要素別の分析、およびその分析結果のデータ化(数値化)の作業から着手した。この作業を進めた結果、前年度の分析課題数は486題にとどまっていたものが、日本の聴音テキストは541題(7冊)、フランスの聴音テキストは200題(2冊)の総計741題(9冊)の課題の構成を明らかにすることができた。目的として掲げていた1000題には及ばず、また一部のテキストは掲載されている課題数があまりに膨大で分析対象とする課題を任意に選択せざるを得なかったため、目指していた精度での分析は行えなかった。しかしながら、本研究の目的の一つである聴音課題における難易度の設定について、各テキストの傾向が分析によって具体的な数値として示されたことを考えれば、一定の信頼度をもったデータが得られたものと考えている。 上記のテキストの傾向としては、1)音楽構成要素(調性、音程、リズムなど)を複層的かつ有機的に関連させつつ、明確な学習指針もって段階的に難易度を設定しているもの、2)難易度の設定はごく限られた音楽構成要素に依拠してなされ、学習指針が不明瞭なもの、3)難易度が示されているものの、それぞれの音楽構成要素での難易度がかなりランダムに変動しており、学習指針がほとんど見出せないもの、の大きく3つに分類できることがわかった。もちろん、この結果や判断は各テキストの価値を否定するものではない。本研究においては、学習者が無理なく段階的に聴音の能力を高め、指導者は指導すべきポイントに即した課題を適切に与えられるような教材の開発を目指していることから既存の聴音テキストの内容を把握するのは不可欠であり、テキストの多様性があることをデータによって具体的に認識できたのは有意義であった。 今後、本研究で目指す教材作成においては、どのような観点から難易度の段階を設定するかデータを再度精査した上で方針を決める必要がある。また、平成24年度からは学習者への聴音レッスン(週1回)も開始となるため、各回のレッスンでの学習者の解答状況も視野に入れつつ、聴音課題作成に向けた準備を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成22年度に当初の研究計画より作業が遅れ、その影響が現在まで続いている。また、本来であれば学習者への聴音レッスン開始前には、与える課題が完成されていなければならないが、毎週のレッスンに合わせて作成している状況にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
平易なものから難しいものまで広範囲な難易度による課題作成を考えていたが、平成24年度から開始するレッスンでは主に初学者や、経験者でも1年未満の者が中心となるため、作成課題の難易度を限定する必要性を感じている。
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