日米の戦争体験者を対象として、過去の「健康体験」、その後現在に至るまでの健康被害とその影響を聴き取り、体験の個人差と文化差、およびその後の歩みの中で健全さを回復しようとする強さ(レジリエンス:resilience)に着目した分析を行うことを目的とする。米国パール・ハーバー生存者協会(PHSA)の協力の下に計26名に実施したインタビューと、広島県被団協と被爆者団体協議会東京都支部(東友会)の協力を得て被爆者28名に実施したインタビューについての分析を進め、そこから「健康体験の転換点」の抽出とそれらが具体的に表出された引用句の整理、そして、各研究者から出された日米の戦争体験者にみられるそれぞれ独自の視点、日米共通にみられる視点の評定を比較検討し共有化をはかった。平成22年度は、すべてのインタビューの内容分析を終了し、その内容を2010年9月27日-29日にかけてWashington DCで開催された米国看護学会(2010 State of the Science Congress on Nursing Research)のシンポジウムにおいて日米の研究者4名が発表した。その場には藤崎駐米大使夫人も参加し、活発な質疑を行うことができた。その後、Advances in Nursing Sciences誌に"A lifelong journey of moving beyond wartime trauma for survivors from Hiroshima and Pearl Harbor"と題して投稿し、修正稿の査読中である。また、ドラマとしての上演に向けて脚本化を進めるため、米国からKetty Morris Florida Atlantic大学芸術学部博士課程学生を呼び、今後のスケジュール確認、日本での上演方法などについて討論を行った。平成23年度には広島赤十字看護大学で予定されている国際ヒューマンケアリング学会において本テーマに関するワークショップを持ち、看護、ケア研究者との交流を持つこと、中学生向けの教材作成の方法、交渉ルートなどについての討論を進める予定である。 [連携研究者]伊東美緒 東京都健康長寿医療センター研究所・研究員 インタビューデータの質的分析 [研究協力者]Patricia Liehr 米国Florida Atlantic大学看護学部教授 米国での分析の取りまとめ Andrew Binder米国Florida Atlantic大学教育学部准教授 学習教材のプロトタイプ作成
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