本研究で取り上げる超重症児は、重症心身障害児の中でも特に濃厚な医療的ケアを必要とする子ども達であり、その心理学的な解明やより有効な教育指導方法の開拓がまだほとんど進んでいない。このような状況の中で、本研究では、教育の場において超重症児の担当教師は指導上どのような困難に向き合い、その改善のためにどのような工夫を行い、さらにどのような課題を抱えているのかを明らかにすることを目的とした。このような困難・工夫・課題が明らかになれば、今後我が国の重度・重複障害教育分野の研究者・実践者が取り組むべき研究課題もより明確に示されると考えた。 このために、今年度はまず、特別支援学校の担当教師らの実践の場(病院内)に参与観察したり、教師らと互いに連携しながら著者ら自らが実践的な検討を展開した。対象は4事例であり、このうちの2事例は主に皮膚感覚に、1事例は視覚と聴覚に働きかける取組みを行い、さらに1事例については、ベッド上で可能は経験の蓄積を目指す取り組みと文字習得のための基礎学習を展開した(最後の1例については、指導学生により卒業研究としてまとめた)。これらの事例に関しては、平成22年度もビデオ録画を行いながら引き続き指導経過を追跡する予定である。 次に、肢体不自由および病弱特別支援学校373校を対象としてアンケート調査を実施した。調査内容は、アンケートIとして「超重症児の在籍状況に関する調査」(超重症児スコア25点以上に該当する幼児児童生徒の在籍数と指導の場)、アンケートIIとして「超重症児の指導の実際に関する調査」(事例の状態像、観察・指導で着目する点、指導内容、指導上の難しい点、支援機器の使用状況、指導上の工夫点、取り組むべき研究課題、等)である。回答の回収率は約60%であった。該当する児童生徒がいないという回答もあったが、小・中・高等部あわせて数名の児童生徒が在籍しているという回答が最も多かった。この調査結果に関しては、平成22年度も詳細な分析を実施する予定である。
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