本研究で取り上げる超重症児は、重症心身障害児の中でも特に濃厚な医療的ケアを必要とする子どもであることに加えて、睡眠・覚醒状態の区別が困難であったり、刺激に対する意識的な反応が明確でない子どもたちが少なくないが、その心理学的解明やより有効な教育指導方法の開拓はまだほとんど進んでいない。このような現状を踏まえ本研究は、教育の場において超重症児の担当教師は指導上どのような困難に向き合い、その改善のためにどのような工夫を行い、さらにどのような課題を抱えているのかを明らかにすることを目的としている。このため、本研究においては一昨年度に全国の病弱・肢体不自由特別支援学校を対象とする全国調査を実施し(報告済み)、昨年度末には全国の知的障害特別支援学校113校を対象とする全国調査を実施した。本年度においてはまず、この知的障害特別支援学校に対する調査の結果を整理した。73校(回収率65.5%)より回答が寄せられ、このうち53校に222名の超重症児が在籍していた。これを踏まえて、子どもたちの状態像、基本的指導の場、教育目標や指導内容、指導の難しさの背景、支援器機の使用状況、指導上の工夫、取り組むべき研究課題や研究機関に期待することについて、回答内容の分析を行い、後述する報告書にまとめた。次に、濃厚な医療的ケアを必要として最重度の脳機能障害や筋疾患を有する子どもに関わっている全国の特別支援学校教師や療育機関職員および大学教員に呼びかけ、「最重度障害児への教育支援とその評価」と題する教育セミナーを2日間実施した。2日間の参加者は延べ124名で、(1)最重度障害児の教育課題、(2)かかわりと評価、(3)教材・支援器機の開発・活用、(4)社会とのかかわりという4つの観点からの話題提供と活発な協議が行われ、研究課題についての認識を深める有意義な機会となった。さちに、昨年度から引き続いて指導場面へ参与観察を行い、調査だけでは分かりにくい指導・学習評価の難しさ指導内容の在り方を考える機会を得た。最後に、以上の取り組みを含めてこれまでの成果を研究成果報告書にまとめ、全国の特別支援学校および教育系大学・学部の特別支援教育講座に配布した。
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