高等学校教員の間で特別支援教育に対する認識が高まりつつある中で,生徒の学業不振や人間関係のトラブル等について,単に気力の無さ,要領の悪さなどに原因を帰することなく,授業の工夫や環境調整,ニーズに応じた個別支援など,学校・教員側が対応すべき課題として捉えられるようになってきた。特に発達障害のある生徒に対しては,一人ひとりに応じた,いわばオーダーメイド型の支援が必要であり,相談支援体制の整備に加えてカリキュラム整備を進めることにより,そのような支援を可能とする体制を整える必要がある。カリキュラムを独自に構成することは,通常の小中学校では難しいが,高等学校においては「学校設定教科」や「学校設定科目」などを活用しながら整備しうる可能性がある(たとえば,「コーピング」などの学校設定科目を置き,人間関係スキルの向上を図っている高等学校がある)。しかしながら,特別支援教育に対する認識が高まってきたとはいえ,高等学校における取り組みは教員の意識啓発や相談体制の整備といったことに留まっている場合が多く,意識的な教員が個々に支援に取り組んでいる状況が見て取れる。これは,以前の特殊教育体制のなかで制度的基盤が手薄であり現在も同様の状況が続いている高等学校においては,特別支援教育に活用しうるリソースが限られ,生徒支援のノウハウの蓄積がなされてきていないこと,また,専門学部出身の教員が多く,養成段階で特別支援教育について学ぶ機会が限られていることなどが関係していると考えられた。このような中,近年少しずつ数を増やしている中等教育学校(中高一貫校)が,特別支援教育の制度的基盤を活用しながら,かつカリキュラム編成の自由裁量を活かしてカリキュラム整備を含めた総合的な支援体制構築のモデルを提供しうる場であろうと考えられた。
|