研究概要 |
本研究では視覚障害者に対して数学高等教育における物体の形状解析手法などを理解させるため,物体の形状情報をテキスト表現化する方法を調査研究し,高次元空間を取り扱う数学教育を支援する教材を開発することを目指している.本年度の研究業績では,まず,触覚で認識が困難な図形の微少な変化や細かい違いを認識する方法として,MIDI音声を利用した図形形状の感覚的理解の方法について検討を行い,図形からMIDI音声を出力するソフトウェアを開発した.この研究では,画像のDCT係数の符号情報によって,画像におけるエッジ等の位置を表現可能であるという特徴を利用した.DCT係数の正負符号は,画像の幾何学的構造における大局的特徴を表現していることから,この正負符号を用いて,MIDIのメッセージコードを作成した.その結果,音と画像で信号の性質がまるで異なるため,触覚認識のように物理的に図形があたかも存在するような形での提示はできないものの,触覚では分かりにくい形状の違いをはっきりと区別できる特徴を見いだせることが実験で分かった.また,出力される音が図形の形状情報をもつ符号列から構成しているため,類似した図形や同一図形の表示位置が微少に変化した場合などにおいて,特徴的な音を出力し,感覚的に図形の形状特性を感じ取れる特徴があることが実験で判明した.このことから,図形の形状を表すパラメータなどのテキスト情報と音による図形の状態提示をすることで数学教育をより容易に行うためのツールの開発の可能性があると分かった.
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