今年度の研究成果は以下の3点にまとめられる。 1.接触困難な長期欠席児童生徒(および保護者)に対し、学校教職員がとりうるアプローチに関する議論の前提として、保護者の就学義務とその不履行について法的規定や裁判例を整理し、学校教職員による家庭訪問の法的位置づけとその限界を検討した。その結果、就学義務不履行による督促については、議論が「不登校」にマスキングされたまま弁別・整理されておらず、本来、出席の督促をすべき相手に督促を行うための条件整備がなされていないことを指摘した(羽間・保坂・小木曽、2011)。また、戦後日本における「子どもの危機的状況」の一つとして不就学につながる長期欠席が問題であったことを掘り起こし、「学校ぎらい」「登校拒否」「不登校」というラベリングによるマスキングがされてきたことを明らかにした(保坂、2011) 2.長期欠席児童生徒への支援の一環として教育委員会で行われている、家庭訪問相談員事業に関する聞き取り調査結果の分析から、事業が抱える課題とその解決策を検討した(伊藤・堀下・保坂、2010) 3.被虐待体験を有する非行少年事例を、予後により安定群と不安定群に分類し、学校時代の支援者との関係を比較した。その結果、安定群では学校教師等の支援者とのほど良い関係があったが、不安定群では認められなかった(羽間・西、2010)。 以上を踏まえつつ、本年度に開始した、虐待による児童生徒の死亡検証事例や、家族による長期監禁事例の再検討などを引き続いて行っていく予定である。
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