研究概要 |
1.今年度の研究結果は以下の3点にまとめられる。 (1)学齢期児童虐待死亡事例で、地方公共団体による検証報告書が公表され、平成21年5月から平成23年5,月までの間にアクセス可能だった4例を、学校教育の観点から再検討した。その結果、(1)全例で、転居・転校またはそのどちらかがあった、(2)3例では長期欠席があり、保護者が学校教職員の家庭訪問を拒否するなど接触困難だった、ことが明らかになった。以上から、接触困難な長期欠席児童生徒の事例では、緊急介入が必要な「危険な欠席」が多いとの認識が求められることが改めて指摘されるとともに、学校は、転居や転校前の児童生徒の情報を得ていく必要があると論じられた。 (2)地方公共団体による検証報告書が公表されている、保護者による長期監禁事例2例の再検討を行った。その結果、両事例ともに、「不登校」という問題にマスキングされ、学校や教育委員会、児童相談所等の諸機関が、虐待(ネグレクト)という認識を持っていなかったことが確認された。 (3)ある県の10の市町村教育委員会の協力を得て調査した、年間15日以上欠席した児章生徒のデータを分析した。その結果、その出現率は、年間30日以上の長期欠席と同様に、市町村によって大きく異なっていた。さらに、そのうち、ほぼ同規模の市町村で、年間15日以上欠席した児童生徒の出現率が大きく異なる2市町村の中学校データを比較したところ、同出現率が高い市のほうが、(1)学校規模がより大規模であり、(2)経済状況(生活保護率等)がより厳しいことが明らかになった。 2.平成21年度から今年度までの研究結果は、16th World Congress of the International Society for Criminology、日本児童青年精神医学会、日本教育社会学会、日本子ども虐待防止学会等で発表され、報告書としてまとめられた(羽間・保坂・小木曽、2012)。
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