特別支援教育の推進に伴い、発達障害児の学習と生活への支援がますます重要とされている。その支援の視点の一つが不器用である。本研究の目的は、近年注目されている発達障害児の不器用の実態と要因を探り、それに応じた教育支援の方法を検討開発することである。本年度の目的は、粗大運動と微細運動の両者から、知的障害を含む発達障害児の不器用の実態を把握することである。取り上げる運動は、単一運動ではなく反復運動とした。粗大運動としては、その場連続ステッピングを行った。対象児は健常児10名、健常成人20名、知的発達障害児者20名である。健常児者については、発達に伴いステッピングのばらつきが減少すること、ステップ周波数と脚の挙上高さがよく相関し効率よい運動に変わっていくことがわかった。知的発達障害児については、健常成人と同等にステップできる者と、ばらつきが大きい者に分類された。微細運動としては、手指の反復運動を行った。対象児は健常児20名、健常成人20名、知的発達障害児者20名である。健常児者については、発達に伴い時間的ばらつきが減少すること、特に2Hz近傍の周波数でこれが明瞭になることがわかった。知的発達障害児については、健常成人と同等に運動できる者と、ばらつきが大きい者に分類された。しかし、こうした者でも2Hz近傍に安定の周波数があるという傾向は同様であった。ここから、運動を円滑かつ巧みに行い得る周波数の存在が示唆され、それを意識した支援の可能性が考えられた。知的障害のない発達障害児についても手指の運動を試行的に行い、同一生活年齢の児童生徒とは確かに運動時間に差異はある者の、正確性についてはあまり差異がなく、運動時間の制限が不器用に影響している可能性が示された。次年度も継続して実態を明らかにしていく。
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