本研究の成果をまとめ、以下のように発表した。 1.感化院対象者・入所経緯・入所後の処遇を規定する感化法の改正、少年教護法成立の過程における論点の整理 各施設における障害児への特別な処遇の確立については、児童鑑創による分類処遇など、法律の規定(少年教護院内に児童鑑別機関の任意:設置が盛り込まれた少年教護法)に影響を受けたことをふまえ、感化法改正期成同盟の感化法改正案・衆議院に上程された少年教護法案および衆議院・貴族院での審議過程の分析を行った。この研究成果の一斑を「少年京教後法案成立経緯に関する研究-法案内容の変遷に着目して-」『和歌山大学教育学部紀要(教育科学)』第62集として発表した。 2.入所児童の実態調査および児童の実態に応じ特別な処遇を講じた池田千年(兵庫県立土山学園長)の保護教育の検討 入所児童の実態が入所後の処遇に与えた影響を明らかにする一斑として、精神科医でもあった池田千年を取り上げた。彼の保護教育論は、精神医学的知見をベースとして、感化教育を「保護教育」ととらえなおし、不良行為の原因を遺伝あるいは社会環境による不利益によるものとの立場から、(1)保護児童の教育保障を社会全体の課題として位置づけたこと、(2)少年教護法制定前後より、「少年の不良化防止、感化のため」の手段として保護教育をとらえるのではなく、保護児童の教育保障自体に意義と価値を見いだす論調に変化したことを明らかにした。
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