研究概要 |
今年度は,3年間の研究の2年目として,研究計画2に着手した。 具体的内容としては,福井市平谷こども発達クリニックにおいて,学習障害の診断を受けた一児童に対して,事例研究として,読みの包括的な評価(音韻的側面の問題に加えて視覚的認知の側面,音読の速度等の測定など)を行い,個別の指導計画を立案した。学校との連携は随時行ったが,主としてクリニックにおいて言語聴覚士が読みの指導を継続的に行ったので,その成果についてスーパーバイズするとともに,長期的フォローを行った。この研究成果は,平成23年度の学会において発表の予定である。 今年度の研究の意義は,認知神経心理学的評価法を施行することにより,本研究の評価法が読み障害のスクリーニング検査としての意味だけではなく,指導にもつながる包括的な方法論としての検証にあたったことである。対象児は広汎性発達障害を合併しているため,聴覚的な理解や語彙の発達の面で苦手さが認められ,通常の伝統的な読み指導だけではなかなか成果が上がりにくい面が認められた。認知神経心理学的に障害機序を考察することで,障害のある部分に的確にアプローチできたと考える。このことは,学習障害の中でも学習の基盤となる読みの問題を持つ子どもに対する支援という喫緊の課題に答える重要な成果であると考える。 今後の課題としては,学校とのより緊密な連携,および担任や特別支援教育担当の教員に,読み障害についての情報を提供して,学校における指導に成果を生かしていくことであると考える。
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