本研究課題の第1の目的は、特別支援学校教諭免許状の有無と専門性およびメンタルヘルスとの関連について、教員に対する質問紙調査と諸検査から実証的に明らかにすることである。研究第2年度は、特別支援学校教諭免許状を保有しないまま障害児の指導にあたっている現職の本務教員57名を対象とした。当初100名を予定していたが、調整にあたった県教育委員会の都合で57名となった。十分な説明の上で、個人情報に細心の配慮をして無記名番号式の結果フィードバックを保証し実施したところ、52名より有効回答を得られた。1割以上の教員が調査後に個別な相談を求めてきており、教員に対するメンタルヘルスサービスの必要性を強く感じた。調査結果から、6割以上もの教員が精神健康度検査(GHQ28)で6点以上を示し、メンタルヘルスに何らかの不調があるものと考えられた。その他、「ストレッサー尺度」「対処行動測度」等についてもデータ収集し、教職経験年数や特別支援教育の専門性自己評価、校内/校外相談者の有無、ソーシャルサポート等との関連性について検討した。今回は特別支援教育の専門性とストレスとの関連を検討したが、教師のストレスにつながりやすい項目としては、「保護者の対応」が50.0%と最も高く、「個別の教育支援計画の作成」と「授業実践力」が38.5%で続いた。本研究課題の第2の目的は、教員の精神疾患の予防方法について、訪問調査から優れた実践ノウハウを収集し、わが国の各都道府県教育委員会等で実施するのに望ましい予防プログラムの試案を作成することである。第2年度は国内外の民間企業等で広く導入されているEAP(従業員支援プログラム)についての情報収集を引き続き行った。EAPに関するフォーラムに参加し、民間のサービス事業所の情報を多数入手し、各事業所のサービスプログラムについて分析した。また、EAPに関する民間企業での日米比較なども文献的に行い、雑誌論文に投稿し掲載された。
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