本研究年度の第1の目的は、特別支援学校教諭免許状の有無と専門性およびメンタルヘルスとの関連について、教員に対する質問紙調査と諸検査から実証的に明らかにすることである。過去4年間に引き続き教員に対する質問紙調査と諸検査を実施した。研究最終年度は173名の教員を対象として分析した。精神疾患発症のリスク分析を行うとともに、ストレスコーピングの実態と効果についても統計学的に検証した。その結果、GHQ得点6点以上の割合は、男性53.8%、女性61.3%であった。コーピングにおいて、経験年数が10年から20年の中堅教員群の方が、10年未満の若手教員群より適応的対処行動をうまく行えていなかった。QOLにおいては、若手教員群より経験年数20年以上のべテラン教員の方が、活力や疲労、仕事の能力等についての主観的幸福観が有意に低かった。普通学級の教員は特別支援学校の教員より「心理的領域」において主観的幸福観が有意に低かった。 本研究年度の第2の目的は、精神疾患による休職教員らに対する支援や対策の現状把握のための情報収集を行うことである。これまでに教員の精神疾患の予防方法について、訪問調査して優れた実践ノウハウを収集し、予防プログラムの試案を作成した。国内外の民間企業等で広く導入されているEAP(従業員支援プログラム)を教育委員会でも導入できないかという視点で検討し、国際学会でも報告を行った。こうした資料は県教育委員会のメンタルヘルス対策検討委員会の外部専門家らにも配布し、改善策の提案を依頼した。また復職支援の専門支援機関や民間企業と情報交換を重ね、主に教員や公務員の実態が明らかとなった。復職支援をはじめ障害者雇用と職リハを中心的に行う高齢・障害・求職者雇用支援機構では予算源の問題から教員や公務員に対する支援ができないという問題があり、彼らの受け皿として他機関の役割が求められており今後の課題である。
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