本研究は、軽度発達障害児の臨床症状として重複することの多い多動性、不注意、衝動性の3症状と、その背景となる注意障害との関連を明らかにすることを目的に、視覚および聴覚刺激に対するそれぞれの特徴を分析できる評価機器を開発し、臨床症状との関連を分析すること、更に、その結果からリハビリテーションや教育方法に関する提言を行う事を目指している。平成21年度は一部対象者の障害構造および行動上の特性を把握すると伴に、注意機能評価機器の開発と予備実験を行った。平成21年度における研究で参加に同意の得られた対象者は10名で、内4名については注意機能評価を実施できた。注意機能評価機器はCypress Programmable System-on-Chip(PSoC)に、モニター上に添付した光センサーからの刺激を入力することで、刺激提示をソフトウエアから独立させるシステムを開発することで、コンピューター環境に依存しない正確な反応時間を計測できるシステムを構築できた。現在、開発を終えた注意機能評価課題は、1点の刺激が中央に提示された時に反応する呈示条件課題と、8点の中から1点が消失した時に反応する消去条件課題である。4名の対象者では呈示条件課題のみで遅延が認められた者2名、両課題で遅延したのもは1名という結果であった。臨床所見との関連では、4名全員に不注意・多動との観察所見はあったものの、両課題で遅延しなかった者は記憶保持の問題、呈示条件課題で遅延した小野は注意の集中、両課題で遅延した者は注意の配分の問題が示唆される結果であり、行動上の特性から予測される注意機能の問題を、課題間の反応時間の関連から、客観的に評価できていることが示唆され、症状のタイプを分析する上で本検査が有用な手段となると考えている。22年度は症例数を増やすと伴に、更に臨床症状を反映する注意機能課題を開発する予定である。
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