研究概要 |
発達障害児の多感覚刺激に対する注意機能を評価するために,平成22年度に引き続き対象者の障害構造および行動上の特性を把握すると伴に,開発した注意機能評価を用いて縦断的なデータ収集を行った.縦断的注意機能評価を行えた課題は,(1)"1点円周呈示課題"(2)"1点円周呈示妨害課題"(3)"消防車課題"であった.対象者は発達障害を抱える児童・生徒15名で,6ヶ月以上継続的に情報収集を行えた対象者は7-14歳までの7名であった.7名の概要は知能指数(WISC-III)トータルIQで75-109の範囲で,広汎性発達障害もしくはその疑いと診断され,何らかの注意に関する症状を持つ者であった.結果は(1)では2名のみが実施可能であったが6ヶ月の作業療法介入後に4名が評価可能となり、(2)では全員が検査途中で実施が不能であったが,6ヶ月後には2名が可能となった.(3)は普段から不注意の症状を示す1名の対象者が極端に遅延し,他児は参考値の健常成人から比べると50-100msec程度の遅れが認められていたが,経過を経て3名は介入前と同様の遅延を示したが他児はほぼ正常値を示した.本結果からは発達障害に合併する注意の問題は,呈示刺激の空間的な広がりが大きく影響し,注意の空間的な配分と移動という要素が日常の行動特徴と関連が示唆された.また,視覚ノイズはターゲット刺激の位置が固定されている場合には影響せず,空間的要因と結びつくことで2次的に注意機能に影響することが考えられた.この特性は,作業療法を提供することで軽減し臨床症状も改善することが確認できた.しかしながら,環境からの刺激が多い人混みの中や遊びの中で不注意や転導を示す傾向が継続して認められており,これらの注意の要素を検出できる課題を考案する必要性が伺われた.
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