本研究は発達障害のある者の学校教育から就労への移行を支援する、障害特性をふまえた体系的なキャリア教育プログラムを開発することを目的とする。 これまでに「小学校高学年段階」「中学校段階」の少年期のキャリア教育プログラムを実施したが最終年度である平成24年度は、将来について現実的に見据え就労も一つの選択肢として考え始める「高校段階」の青年期のプログラムを開発し、実施した。「カフェ」の題材を通し、店の企画・実行を仲間と協力して遂行する経験や客と接する経験を通し働く上で必要となる「勤労観・職業観」「作業面」「対人面」に関する技能の基礎を学ぶ機会を提供した。プログラム課題はより高次な課題も含め、計画する能力を高めることを目的とした。コーヒー等を販売することによる収益の計算、利益を予測した上での販売計画を行うこと、また意思決定や責任感を育てることに加え、コーヒーショップへの取材を通し自分たちが開く店舗の具体的なイメージについて話し合う課題を取り入れた。また「中学校段階」以下と同様に、仕事の役割分担を自分で選択し、その適正について自己評価を行うことで、実践したことの振り返りを狙った。 今年度は7名(中学生と高校生)を対象とした「カフェ」での接客について自己評価と他者評価を行った結果、自己評価において、練習場面より本番での評価が低かった。高校生段階では、中学生段階以下と比較し、自己評価と他者評価の結果の解離は少なかった。苦手なスキルは、中学生段階と同様に、「適切な表情」「アイコンタクト」「柔軟性」であった。保護者を対象としたアンケート結果からは対人関係において、「困難にであったときに人に助けを求めるスキルを学んだ」「人を傷つけない言い方を学んだ」等の項目の得点が低い結果であった。これらのことを踏まえ今後は対象者が学びにくいスキルの獲得について考慮したプログラムの開発を目指したいと考える。
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