発達障害児・者に対して、特別支援教育の導入や発達障害者支援法等の支援体制が進められている。しかしながら、大学・短期大学における支援体制は不十分であり、その確立が求められている。そこで、本研究出張は、在学する発達障害のある学生やその疑いのある学生の実態調査と教育職員の指導の困難さに関する調査を実施することにより基礎資料を収集すること、及び支援方法を開発することを目的として開始された。 平成21年度は、学生相談室への来室者の事例分析、及び質問紙法による教育職員への実態調査を踏まえて、問題点について検討した。質問紙の作成にあたり、最新の研究成果に関する資料を収集し概観した。分析の結果、支援方法については、学生相談室などの担当部署が中心となり個別対応や関連する教職員や部署の間を調整する支援と、十分とはいえないが教育機関全体の制度面を含めた支援とが現在実施さりていた。前者の場合では、発達障害に関する知識を持っている学生自身あるいは周囲の友だらや教員からの問題の指摘により支援が始まるのに対して、後者は大学・短期大学全体で積極的に学生の抱える問題を明らかにし、支援する枠組みを構築していくこととなる。したがって、教育機関全体での取り組みの場合には、教職員への発達障害に関する啓蒙活動に加えて、当該学生への直接的な支援、および当該学生と関わりのある教職員および学生も視野に入れた支援体制の構築を図るための体制作りが示唆された。第二に、大学教員への全数調査によるスクリーニングの実施の必要性が示唆された。この結果、当該学生への支援が早期にかつ有効に機能することが指摘された。大学においては全入時代を迎えることに加え、多様な入試制度が導入されている。このような現状の中で今後も発達障害のある学生やその疑いのある学生への支援方法を検討し続けることは重要な課題である。
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