発達障害児・者に対して、特別支援教育の導入や発達障害者支援法の施行により大学等の高等教育機関においても支援体制の確立が求められている。しかしながら、大学・短期大学における支援体制や具体的な支援方法の内容は不十分であり、支援体制を明確にし、具体的な支援方法を開発していくことが求められている。そこで、本研究では、在学する発達障害のある学生やその疑いのある学生への支援体制のモデルの明確化および具体的な支援方法を開発することを目的とした。 本年度は学生相談室における発達障害のある学生の事例分析、質問紙法による実態調査に向けた項目の作成、啓発用パンフレット作成のための資料収集を行った。その結果、支援体制については、学生相談室が中心となり個別対応や関連する教職員・部署間の調整を行い、段階的に支援を行う支援体制モデルの作成が必要と考えられ、モデルの提示を行った。今後は、教育機関として取り組む支援プロセスを明確にし、支援体制モデルが有機的に機能するために必要となる要因の分析が喫緊の課題であることが示唆された。 さらに、教職員および学生への発達障害に関する啓発活動に加えて、当該学生への直接的な支援、および当該学生と関わりのある教職員および学生も視野に入れた支援体制が機能するための研究が必要である。加えて、具体的な支援の場において合理的な配慮に基づく支援方法について教職員間で共通理解を図るとともに、保護者や高校との連携のための枠組み作りが必要であると思われた。以上のような現状の中で今後も発達障害のある学生やその疑いのある学生への支援方法を検討し続けることは重要な課題である。
|