e-Learning教材では、学習ユニットの主タスクは、サブタスクとサブサブタスクに分解され、サブサブタスクが吹き出し式教示として提供される。学習者は、それを読み、その内容に対応するムービーを見て、作業ウィンドウでそれを再現する。 前年度までに、実験用の教材(タイムラインベースのアニメーションの基礎技術を教示し、簡単なアニメーションを制作する手順を示す5学習ユニットからなるe-learning教材)を学習者がどのように利用するのかを計測する実験(被験者は、20人の聴覚障害者、20人の健聴者)を実施して、e-learning教材を利用時の視線データ、操作ログデータを収集した。 今年度は、収集された行動データをこの認知プロセスを手続き学習の認知モデルであるLICAIモデルに沿って捉え直し、教材の改善すべき点を検討した。その結果、タスクを完遂した学習者であっても、吹き出し式教示を読まなかった場合には、知識が適切に獲得されない可能性があることがわかった。実験では、被験者の半数がタスクを完遂できなかったが、タスクを完遂した健聴者の教材利用過程のなかから、教材の適切な利用法のヒントが得られた。すなわち、吹き出し式教示とムービーの内容の理解の形成を、そこで得られた理解に基づいて実習をすることになる作業ウィンドウの情報とリンクさせながら、行う、ということである。これには、学習者に教材の適切な箇所に注意を向けさせることが有効と考えられる。e-Learning教材は学習者のペースで学習ができることが特長であるが、教材側が適切に学習者の注意を制御することも同時に重要であるという結論を得た。
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